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ビッグテックの支配:ラリーは減速しているのか?

Aug 20, 2025 11:17 AM

米国株式市場は史上最高値圏にありますが、今回の上昇は異例なほど裾野が狭いものです。上昇分のほとんどが少数のメガキャップ・テックに集中しています。4月以降、S&P 500は約27%上昇し、「マグニフィセント・セブン」は現在、指数の約3分の1を占めています。エヌビディア単独で約8%、マイクロソフトとアップルがそれぞれ約7%と6%を構成。3社合計でS&Pの5分の1超に達します。では、これほど少数銘柄に牽引されたラリーはこの先も続くのか、それともモメンタムに亀裂が入り始めているのか——それがシンプルな問いです。

チャートが示すこと

S&P 500のモメンタム・シグナル

出所:TradingView。すべての指数は米ドル建てのトータルリターンです。過去の実績は将来の成果を示唆・保証するものではありません。データは2025年8月20日現在。

S&P 500は主要移動平均線の上でトレンドを維持していますが、直近の上昇局面では出来高がやや弱めです。

S&P 500は春以降、一貫して上昇トレンドを描き、過去高値を上抜けて最高値を更新してきました。テクニカル面の配置は良好で、50日線が100日線の上、200日線はさらに下に位置しています。RSIは中立圏で過熱シグナルはなく、MACDもプラスを維持する一方、直近のヒストグラムはやや弱含み。とはいえ出来高は物足りません。結論として、チャートは強気でも、参加の広がりは限定的です。

メガキャップ・テック vs S&P 500

出所:TradingView。すべての指数は米ドル建てのトータルリターンです。過去の実績は将来の成果を示唆・保証するものではありません。データは2025年8月20日現在。

個別に見ると、テック大手3銘柄も似た様相です。アップルとマイクロソフトは50日線の上を維持しつつ上値抵抗に迫っています。エヌビディアは大幅上昇の後に一服し、現在は50日線のすぐ上で推移。いずれもRSIは中立で過熱感はない一方、積極的なブレイクアウトも見られません。モメンタムは良好ながら、確信度はやや薄い印象です。

強気シナリオ vs 弱気シナリオ

強気派は「健全なラリーとは穏やかで過熱しないものだ」と主張します。押し目では継続的に買いが入り、50日線での反発が堅い支持を示してきました。S&Pとナスダックは高値・安値とも切り上げが続き、主要移動平均線も上向きです。メガキャップが高値更新に踏み込めば、指数全体もさらに押し上げられる公算が大きいでしょう。

ナスダックのRSIダイバージェンス

出所:TradingView。すべての指数は米ドル建てのトータルリターンです。過去の実績は将来の成果は示唆・保証するものではありません。データは2025年8月20日現在。

一方、弱気派は「主導銘柄の幅が危険なほど狭い」と反論します。上位テック以外では、多くのセクターが新高値を確認できていません。ナスダックでRSIが頭打ちの一方で価格が小幅上昇にとどまるといったダイバージェンスは、エネルギー低下を示示します。出来高も過去局面より細っており、脆弱性のサインになりがちです。主役のどれかが崩れれば連鎖しかねません。エヌビディアは4月以降で株価がすでに2倍になっていますが、もし50日線を出来高を伴って割り込めばナスダックを押し下げる可能性があります。同様に、アップルが抵抗線で伸び悩めば、S&Pは主要な支えを一つ失うことになります。

現時点では、双方の主張に一理あります。ラリーは続いていますが、脆弱でもあります。

トレーダーが注目するポイント

  1. サポート:S&Pの4,900~5,000ゾーンおよび50日線。ここを割り込むと弱気。
  2. レジスタンス:直近の史上最高値付近である6,500。出来高を伴うブレイクはモメンタムを確認。
  3. 移動平均:S&Pとナスダックの50日・100日線が、支持から抵抗へ転じないかに注意。
  4. モメンタム:RSIが50を下回る、またはMACDのデッドクロスは上昇鈍化の警戒サイン。
  5. 出来高:薄商いのブレイクは脆弱性を示唆。


S&P 500の重要水準

出所:TradingView。すべての指数は米ドル建てのトータルリターンです。過去の実績は将来の成果を示唆・保証するものではありません。データは2025年8月20日現在。

まとめ

足元では、市場の行方は一握りの銘柄に左右されています。チャートは上昇トレンドの継続を示す一方、参加は薄く、ラリーは脆弱です。指数が直近高値を出来高を伴って上抜けば、上昇は続く可能性が高いでしょう。反対に、モメンタム指標が反転する、またはメガキャップが失速すれば、市場の「狭い土台」はたちまち露呈しかねません。次の相場局面が、着実な上昇なのか減速の始まりなのかを明らかにするはずです。